吃音を知る

吃音のあるお子様と親御さんの体験談

はじめに

今回は吃音のあるお子様と親御さんの吃音への関わり方、吃音に対しての考え方の体験談です。
すごく共感しましたし、吃音のある子供や親御さんに読んで頂きたく掲載のお願いをし吃音ラボに掲載をさせていただくことになりました。

※プライバシーに配慮し、お子様のお名前の部分は●●●と表記を変更させて頂いております。ご了承ください。

●●●(お子さんのお名前)に吃音が始まったのは、保育園年少、4才半の頃でした。
急に「こ、こ、こ、こ、これね」と最初の言葉を繰り返し始めました。
私は「吃音」という言葉も知らず、一時的なものだと思っていました。
ただ単に焦っている、慌てているのだと思い、「ゆっくり言えばいいよ」「落ち着いて」と声を掛けていました。すると徐々に、顔を真っ赤にし、苦しそうに発声するようになり、始めの言葉が出なくなるようになりました。
保育園の担任の先生から、「吃音」かもしれないとのことで、小学校にあることばの教室に相談へ行きました。
そこで、東御市民病院に吃音専門外来があること知り、言語聴覚士である餅田亜希子先生の所へ受診することになりました。
当時の私は、急に吃音が出始めた事にとても動揺しました。
今思うと、担任の先生に教えてもらわなければ、それが「吃音」である、と言う事もわからなかったかもしれません。
そして、「続くどもりを治したい、どうにかしたい」と思い始めました。
その為インターネットで吃音について調べ、原因や治療法がないか探すのに必死でした。
そこには、「吃音になるのは親のしつけのせい」「愛情不足だから」「緊張しているから」「慌てているから」などと書かれており、下の子に手がかかる頃だった事もあり
「●●●を吃音にしてしまったのは私のせいだ」
とショックな気持ちで一杯になりました。
そして
「そっとしておけばそのうち自然に治る」
と書いてあるのです。
その為、私自身が関わり方を変えれば治るのだと思い、●●●に吃音であることを気付かせないように、腫物に触るように●●●に関わっていた事を良く覚えています。
ですが、吃音は良くなったり、ひどくなったりを繰り返しながら(吃音の波)、悪化する一方で、私は精神的に不安定になっていきました。
吃音が出始めて約半年を過ぎた年中(5才)の秋に受診となり、餅田先生に吃音について正しい知識を教えてもらいました。
吃音の原因は未だはっきりしていないこと、
「愛情不足だから」「しつけが厳しいから」「緊張しているから」「慌てて居るから」では無いと言ってくださいました。
そして、●●●に「あ、あ、あってなるのはそのままでいいんだよ」と言ってもらえました。
今まで私が●●●にしてきた関わりは全て間違いだと気づき、吃音は「治す」ものでは無く、周りの環境を整えて「安心してどもれる環境」を作ってあげる事が大切だという事がわかりました。
治らないという事にはショックでしたが、苦しそうに話している●●●を見ると、「どもっていても●●●が楽しくお話ししてくれればそれでいい」と思うようになりました。
餅田先生に勧めて頂いた、「キラキラどもるこどものものがたり」と言う本との出会いも私の吃音に対しての気持ちを前向きに変えてくれたきっかけとなり、今でも大切にしています。


病院受診した内容などは、その都度担任の先生へお伝えし、園生活での関わり方などをお伝えさせてもらいました。
年長になり、吃音に波があっても声が出なくなるような事は減り、楽しくおしゃべりが出来る様になりました。その頃は●●●と吃音についてオープンに話せるようになり、私も「あ、あ、あってなってもいいんだよ、それが●●●の喋り方だからね」と伝えるようにしていました。吃音があっても、おしゃべり大好きな●●●に戻ったのです。
年長担任の先生はどもりが出始めた頃の●●●を担任してくださっていたので、吃音について良く理解してくださいました。ことばの外来受診にも同行してくださり、受診の様子を見て頂き、餅田先生と直接お話ししてくださいました。
当時の●●●は、保育園でお友達から話し方について指摘されることは無く過ごせていました。ですが小学校に上がり、吃音について知らないお友達から指摘される可能性は十分にあり、母親の私はその事が心配でした。担任の先生に吃音について資料や本などを読んで頂き、餅田先生、担任、●●●、私で初めての「作戦会議=どんな風に吃音の事をつたえるか?」を開き、年長のお友達に吃音について知ってもらうことにしました。
担任の先生は保育園年長の5、6才の子どもたちにもわかるように文章を考えてくださいました。吃音に対してマイナスイメージの無い●●●は、保育園のお友達に話してもらうことをとても楽しみにしていました。
話をしてもらった後、●●●は、「(吃音のことを話してもらえて)よかったよ!だってみんな、‟がんばって”っておうえんしてくれるし、みんなのパワーが●●●のところにあつまってくるんだ~!」と言っていました。その時の●●●のキラキラした笑顔は忘れられません。
改めて周囲にどのようにして理解を求めていくか、吃音がある子どもたちが過ごしやすく、安心してどもれる環境を作ることが大切であることがわかりました。
そして、周囲の人達が気付いていないから吃音の説明をする必要が無いのではなく、からかいや指摘が起きる前に話すこと、そしてどもる子どもは他にもいて、将来も出会う可能性があるので吃音の知識を知っていてもらう必要があることが大切だと思いました。
そしてその後、担任の先生の提案で、私の住む市内の保育士研修会で餅田先生をお招きし、吃音の研修会が行われました。多くの保育士さんたちに吃音の正しい知識が広がり、とても感謝しています。
小学校へ入学し、●●●の吃音は落ち着いていましたが、小学校の担任の先生と、連絡帳などで日頃吃音の様子など情報共有をしました。
たまに連発はみられるものの、吃音については全く気にすることなく、楽しくお話ししながら過ごせていたと思います。
ところが、2年生の秋、●●●が授業中に「は、は、はい」と連発の症状を伴って話したことに対して、クラスのお友達が話し方を真似するという出来事がありました。
●●●は吃音を真似されたことが初めてで、とても悔しく、悲しかった思いから、
「さっき僕のしゃべり方を真似した人は謝ってください!」
と、皆の前で訴えたそうです。
●●●自身に吃音に対してマイナスイメージがあったとしたら、「僕のしゃべり方がおかしいんだ。恥ずかしい。どもらないように気を付けよう...」と、どんどん吃音が悪化した可能性があると思います。
ですが小さいころから周囲の人たちに「あ、あ、あってなっても良いんだよ」と言われながら育ってきた●●●は、「自分は悪くない!」と、堂々としたものでした。
その姿を見て、「私達がやってきたことは間違っていなかった、ちゃんと●●●に伝わっていた」と、悲しい気持ちよりも嬉しい気持ちになりました。
そして、小学校の担任の先生は、「●●●君の吃音は最近落ち着いていたけど、この機会にクラスのお友達に吃音のことを知ってもらった方がいいね」と提案してくださったのです。
●●●に、「お友達が吃音のことを知らないだけだから、教えてあげようね」と、声を掛けたところ、「うん、そうだね!」と前向きな返事をくれました。
早速、学校で「作戦会議」が開かれ、「吃音の授業」を行ってもらうことになりました。まずは担任の先生に、資料と本を読んで頂き吃音について知って頂くことにしました。
●●●は、自分の思いを作文に書きました。
「(吃音を)まねしたりわらわれたりすると、とてもかなしいきもちになります。わらわれるとうれしいハートがわれて、たのしいことやうれしいことがハートからでてしまいます。さいごまで話をきいてください。あ、あ、あ、となってしまうのはぼくのしゃべりかたです」
●●●らしい文章だなぁと思う反面、2年生でもしっかり伝えたいことが言えていることに驚きました。
私もクラスメートのお友だちに宛ててお手紙を書きました。
あ、あ、あ、となるのはドキドキしたり緊張するから、早口で言おうとするからではないこと、どうしてあ、あ、あ となるか原因がわからないことを説明し、「あ、あ、あ、となるのは●●●の話し方です。
そのまま最後までお話を聞いてあげてください」と書きました。
●●●は話が下手なわけでも、話すことが苦手なわけでもありません。
吃音の授業をして頂くにあたり、「個性」の話は必要ないこと、「人の嫌がることをしない、言わない」と伝えるのではなく、吃音の原因や関わり方、「こうしてあげると良いよ」という応援の仕方に重点を置いてお話頂けるようにお願いをしました。
●●●が通級している、小学校にあることばの教室の先生にもお願いしたところ、「●●●さんが言葉のことで困ったことや、苦しいことがあったら一緒に考えたり、沢山楽しくお話しできる為に応援している場所です」というお手紙を書いてくださいました。
●●●は、吃音授業の当日をとても楽しみにしていました。緊張はしたようですが、クラスの皆の前で堂々と作文を読んだそうです。
このことは、●●●にとってまた一つ大きな自信になりました。
そしてクラスの皆が知ってくれたことで、これまで以上に安心してどもれる環境ができたのです。
担任の先生は授業を通じて「教員でも吃音について知識がないことが多いのです。2年生でもしっかり伝わるということ、早い時期から伝えることは必要ですね」と言って下さいました。
クラスのお友達が書いてくれた授業の感想からも「きつ音があったらわらわないでさいごまで話をきいてあげることです」と、しっかりと伝わったことが感じられました。
そしてなんと、子どもたちへの吃音授業にとどまらず、担任の先生のご配慮で、学校の職員会議でも吃音について勉強会をして頂けることになりました。
約40名の先生方に吃音の正しい知識が広がりました。
そして、クラス替えになる前に学年全体に向け、担任の先生からもう一度「吃音の授業」を行ってもらいました。先生方が「吃音を理解しよう、わかろう」として下さる事がとてもありがたいことだと思いました。
●●●は2年生にして、自分の吃音にしっかり向き合うことができました。
小さい頃から吃音についてオープンに話し合い、保育園をはじめ周りの理解をすすめたこと、先生方の適切な関わり方により吃音に向き合えているんだということ、それにより、吃音をマイナスなことと思わず、「そのままでいいんだ。どもっていてもいいんだ。」と、安心して過ごせきた事、そしてそれにより吃音の症状が悪化することを防げてきたのだと改めて実感しました。
ですが、家庭でどんなに環境調整を行っていても、子どもが長い時間を過ごす幼稚園、保育園、小学校の先生方、子ども達に関わる祖父母、その他周囲の人たちが正しい知識を持って関わってくれなければ、吃音は悪化してしまう可能性があります。逆に、適切な対応をしてもらえることで、重くなりかけている吃音の症状を、軽減させ、楽に話せる状態に引き戻してあげることもできるかもしれないのです。
吃音についてご理解頂き、吃音がある子どもや親が、希望をもって生活できる環境をこれから一緒に作って頂けたら大変ありがたいです。

吃音ラボ管理人より

いかがでしたでしょうか?
吃音のあるお子様がいる方で、なにをしたらいいか分からないって方も多いと思います。
また自分の育て方が原因で子どもが吃音になったと誤解をし悩んでいる方、吃音の正しい知識を知らず、小さいうちはよくあること。自然に治るとそのまま『放置』をしてしまう方もいると思います。
しかし、この経験談を読み様々なことが出来ると分かったのではないでしょうか。
吃音には、正しい知識と理解が必要です。
吃音のあるお子さんがいる家庭、吃音のある子どもに接する機会のある方など沢山の方に響く内容だと思いました。
吃音をみんなが知っていてあたり前になるような世の中になれば嬉しいです。

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