インタビュー

吃音当事者インタビュー TK

吃音当事者インタビュー

吃音を持ちながら日常生活を行っている当事者さんに職場での体験談や吃音をどのようにカバーしながら仕事をしているかや自身の吃音歴などのお話を伺っていこうと思います。
またお話頂いた内容で吃音改善に関わる内容が出てくる場合もありますが、あくまで個人の考えになりますのでご理解ください。

灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
本日はよろしくお願いします!
TK
TK
よろしくお願いします。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
まず初めにお名前とご職業を教えてください。
TK
TK
TKと申します。今は研究の仕事をしています。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
どういう研究をされているんですか?
TK
TK
今の研究の内容はちょっと詳しくは言えないんですが、昔は吃音の研究をやっていました。これまで合わせると4種類くらい研究をやってきています。
1つ目は、吃音の方にマインドフルネスという瞑想をやってもらう研究を。
2つ目が、吃音の方の注意。基本的に注意は脳科学の関係で論じられることが多いんですけど、パソコンの課題を使って吃音の方の注意にどういう特徴があるかを調べました。
3つ目と4つ目は、まだ論文になってないのでちょっと伏せさせていただきます(笑)
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
マインドフルネスとはどのようものですか?
TK
TK
マインドフルネスというのは、認知行動療法という心理療法があって、その中に組み入れられている方法で、元々仏教の瞑想にルーツがあるものです。
ちょっと仏教というと怪しいイメージがあるかもしれないですけど、(マインドフルネスは)一言で言うと、「気づき」、「アウェアネス」と言われていて、「自分の状態に気づく」という意味で捉えられています。
これまで認知行動療法というと、「〇〇障害には〇〇の治療技法」というように疾患別に分けられていて、それぞれ疾患に対して色んなアプローチがあるということの有効性が示されていました。
しかし、マインドフルネスというのは色んな精神疾患に共通して効果があるということが言われています。そのマインドフルネスを吃音の方に応用した研究はこれまであまり行われていなくて、私が知っているのは1〜2件くらいしかありません。
その1〜2件というのは、マインドフルネスで瞑想を吃音の方がすると心理面が改善するという研究でした。実は私も瞑想をやっていたことがあって。
これまで私は自動的に話していたと言いますか、元々割と不安が高くて、2人だと会話のキャッチボールで話せるんですけど、3人以上の場で盛り上がって話すのが結構苦手で、今でもあまり得意ではないんですけど、そういう場で結構不安が高まる傾向があって、自分が話さなくても周りが勝手に話してくれるので、自分が話さないでその場をやり過ごすというか、話したいことがあっても話さずに場を流すようなことがあって。
マインドフルネスというは「今の自分の状態に気づく」ということをするんですが、話しているときの自分の体の状態とかに気づく、最近は昔ほどにはどもらないので、昔の記憶を思い出すのはちょっと難しいんですけど……。
昔は話したいことが頭に浮かんで、「それ話せないだろ」って自分で決めつけて話すのをやめていたんですけど、今は話したいことがあったらそれを素直に話せるようになったというか、感じるように話すという感覚が少しずつ身についてきました。
これまでは自分で自分にブレーキをかけて自滅していたというか、話したいことがあっても「どうせ話せないだろうな」と思って話すのを諦めていたんですけど、そういうのがだんだんと減ってきて、話したいと思ったことを思ったように話せばいいと。
だから吃音だからといって特別なことするんじゃなくて、感じたままに話せばいいんだなって思ってから、自分自身変わってきた実感があって、そういうのがきっかけで「マインドフルネスを吃音の方にするとどうなるか
というのを研究ですることになりました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
すごい情報量があって(笑)僕の質問がざっくりだったので、それにちゃんと答えていただいてありがたいです!
実は僕もちょっと瞑想をやったことがあって。僕の読んだ本に意志力を鍛えるのに瞑想がいいと書いてあって。瞑想をすると脳の白質?みたいなところが刺激されて意志力が増えると。
TK
TK
確かに意志力は結構、前頭葉機能が関係していて、瞑想すると前頭葉の血流の量が上がりますし、瞑想と前頭葉はかなり関係していますね。
ちょっと吃音とずれてきてしまいましたが(笑)
注意のコントロールというのは、背外側前頭前野というところが担っているので、そこのトレーニングをすると色んな能力が上がるみたいですね。
瞑想は、集中するタイプの瞑想と、オープンモニタリングといって、色んなものを感じる瞑想があります。それぞれ瞑想は効果が違うことがわかっていて、集中するタイプの瞑想だとやはり集中するネットワークが活性化されます。
瞑想で興味深いのが、瞑想は何種類かあって、集中する瞑想と、マントラと言われる瞑想と、オープンモニタリングという色々感じる瞑想と、慈悲の瞑想という自分の幸せや相手の幸せを願う瞑想があるんですけど、すべての瞑想は右の島皮質(インシュラコルテックス)、側頭葉の内側にあるんですけど、島皮質の領域が共通して活性化すると色々な研究で言われています。
ここにどういう機能があるかというと、注意のコントロールとか体の感覚に気づくとか、注意を切り替える能力とか、色々な能力が向上すると言われていて。右のインシュラが脳のネットワークを切り替えるハブみたいな、中枢みたいな役割を果たしている(ことを主張している)研究があります。
右のインシュラというところがかなりあらゆる瞑想に共通している領域で、ここが賦活しやすい人は思いやりがある人という研究もあって、思いやりがある人ほど瞑想の効果が出やすいとか、瞑想の効果が出やすいのか瞑想の練習を真面目にするみたいな研究があるので、島皮質が瞑想のカギになってきて。
意思決定にどう関係があるのかはちょっと詳しくないんですけどね……なんかすいません(笑)
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
吃音ラボ関係なく普通に勉強になっちゃいました(笑)
TK
TK
いやでも吃音と関係あると思っています。吃音の方で脳の働きを調べた研究があって。
デフォルトモードネットワークというのがあるんですけど、内側の前頭前皮質という脳の前頭葉の内側のところと、後部帯状回、いわゆる爬虫類脳といわれるところを含んでいる。
僕も厳密に脳のこと詳しくないんですけど、爬虫類脳みたいなネットワークがあるんですけど、そこが主なネットワークで、吃音の方のデフォルトモードネットワークを見てみると、背外側前頭前野というところが、どういう色のものかはっきりと覚えてはいないんですが、安静時の吃音者の方の状態で背外即前頭前野という意志力と関係しそうな脳領域の活動が確か落ちているような、ネットワークにうまく組み込まれていないような研究がありました。
瞑想と吃音……ちょっと吃音の最新の研究に詳しくないんですけど、吃音となんかしらの関係を見出せると思うんですよね。
吃音の方の右のインシュラコルテックスがどうなってるいか詳しくないんですけど、きっと瞑想するとここの賦活が上がって注意のコントロールがよくなるとか、自分の体の感覚に気づくとか色々な効果があって瞑想の効果が発現するという、そういうメカニズムがありそうです。そういう研究は全然まだこれからですけどね
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
自分の行動や状態を認識するというところで、吃音の症状が重いときって頭が真っ白というかいっぱいいっぱいになったりするんですが、それも関係していたりするんでしょうか。
TK
TK
基本的にいっぱいいっぱいというのは、脳の中心のところ、アーモンド型の形をしている扁桃体というところがあるんですが、そこは恐怖の中枢と言われていて、動物の扁桃体を取ると恐怖を感じなくるんですね。扁桃体は基本的に前頭前野と結合していて、普通の人だったら扁桃体が活動しても前頭野がこれを抑えるようになっています。
たぶんそういうあっぷあっぷの状態って扁桃体が活動して前頭前野でブレーキが効かなくなっている状態なので、そういうときに前頭前野のトレーニングを普段からしておくと、恐怖が出てきても前頭葉機能が抑えてくれるはずです。
そういう点でマインドフルネスは有効だと思います。
後は、マインドフルネスに限らなくても注意のコントロールがうまくできる人は前頭葉があっぷあっぷになりくい方がいらっしゃると思うので。
前頭葉で扁桃体を綺麗に抑えられる人はあっぷあっぷになりにくいと思います。脳観点から言うとですけど。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
それではいっぱいいっぱいになっているときは扁桃体が活発に動いているということなんですね。そういう症状が重くても頑張って話した後って頭が熱くなって、くったくたになるんですよ。脳がアクセルとブレーキを同時に踏んでいるというか、空回っているような感じというか。
TK
TK
さっきの話に関連するんですけど、デフォルトモードネットワークというところが内側の前頭前皮質と後部帯状回という場所が結合していると言われていて、これはマインドワンダリングという考えごとをしてしまう状態と関係していると言われています。
マインドワンダリングというのは、今から何もしなかったら今日の晩御飯とかこの後の飲み会とか色々考えると思うんですけど、そういうのをマインドワンダリングという風に言っていて、マインドワンダリングとデフォルトモードネットワークの活動の強さが関係していると言われていて、瞑想するとデフォルトモードネットワークの結合性が弱まる……正式には覚えてないですけど、デフォルトモードネットワークの働きが変わるということが言われています。
色々考えちゃう状態って多分デフォルトモードネットワークが活動している状態で、そういうネットワークの働きが瞑想によって変わるという研究も結構ありますね。。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
それでは瞑想でそういうのがコントロールできる余地があるかもしれないということですかね。
TK
TK
そうですね、できるみたいですね、熟練すると。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
なぜTKさんは、吃音の研究をしようと思ったんですか?また、研究を仕事にしようと思ったんですか?
TK
TK
大学3年生の頃にゼミを決めないといけなくて、中学生の時に吃音で臨床心理士のカウンセリングを受けたことがあって。
臨床心理士って色々な流派があって、じっくり時間をかけるタイプと、タスクを決めて収められた枠内でシステマティックに合理的に問題を解決するタイプと、大きくは2つあるのですが、僕はじっくりやるタイプの方が中心に当たって。
その方は箱庭の中のミニチュアを置いて、カウンセリングを受ける人をクライエントと言いますけど、クライエントの人がどう反応するかを見て、箱庭からその人の心理を推測するみたいなことをされていました。
僕はそっちの流派のセラピストに会って、三日間だけ症状が良くなって、たぶんそれはカウンセリングを受けていたから変わったと思うんですけど。
そういうこともあってカウンセリングに興味があって心理(のゼミ)を選んで。
でもその頃は瞑想を始める前で、瞑想は知らずにゼミに入ったんですけど、その後からマインドフルネスを知って、「これは吃音にめっちゃ効果あるなあ」と自分で感じ、そこからマインドフルネスの研究を行っている先生がいらっしゃたので、そこの先生のいる大学院に行って今に至るんですけど。
正直、元々研究を一番やりたかったかというと、瞑想とかマインドフルネスに関わるとか、困っている人の助けになれば良いなと思っているんですけど、だから正直研究を一生ライフワークとして思っているというよりかは、そういう瞑想とか、何かしら役に立つっていう思いの中に、研究を位置付けようとしているというか、そういう感じですかね。
自分の経験をきっかけにそういう関心を持って、この世界に入ったということです。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
要するに、カウンセリングを受けてみて良い効果があるという実感を得た経験から、心理学に興味を持ってゼミに入り、そこから瞑想やマインドフルネスのことを知って、それを困っている人の役立てたいという思いから研究をしようと思ったってことですね。
TK
TK
そうですね。
ただちょっと、なんというか、割と実家にお金がなくて、カウンセリングを受けていても、「お金を持っていないか」と言われて、あまり長く(カウンセリングを)受けられない状況があって。その心理士の人は「吃音が治る」とおっしゃっていて、それを信じて行っていたんですけど、でもあんまりこう……まあ一時的に良くはなったんですけど、ずっと良い方向にあったかというとそうでもなくて、どちらかというと、カウンセリングに疑いというか、「治るとか言っていたけど治らんかったやんけ」みないなのがあって、それで自分が中に入ったら何かわかるかなみたいな、当事者的な思いが強かったんですよね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
それでは、カウンセリングが絶対的なものだとはむしろ思っていなくて、「少しは吃音の症状は良くなったけど、言われているほどは治らなかった」というところで、本当のところカウンセリングの効果はどうなんだろうという思いがあったと。
TK
TK
そういう感じですね。むしろどっちかというと、効果のない、効果の出にくいカウンセリングより、ちゃんと効果のある方をやる方がいいんじゃないかなあという感じですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
研究職がしたかったわけではないんですか?
TK
TK
正直そういうわけでは…(笑)
やっぱり吃音なので、臨床心理士の実習であんまり(コミュニケーションで)うまく振る舞えなくて、結構怒られてばかりだったので、これは臨床より研究の方が向いているなという思いがあって(研究に)いったんですよね。
たぶん、僕がもっと臨床を上手くできていれば研究をやってなかったかもしれないですし、逆に面白くてやっていたかもしれないですけど……まあわかんないですね。でも何かしらの役に立つ研究はしたいなと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
そういう経緯で研究を志したんですね。やはり人の役に立つ何かをしたいという思いが根本にあるんですか?
TK
TK
やっぱり、自分のためだけに仕事するのは個人的に嫌ですね。研究者って業績とか色々あるんですけど、業績のためだけに研究するというのは僕はあまりしたくないですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
研究者にも業績とかあるんですね。
TK
TK
論文の数とか、発表の数ですね。どうしても形式的、政治的な要因が強くなっちゃって。そういう実質的なサイエンスに貢献しない研究はあまりやっていきたくなくて、業績を増やすために論文を書くのは嫌ですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
そうなんですね。
研究者って自分の研究したいことをひたすら研究していく職だというイメージがありましたけど、そうではないんですね。
TK
TK
なかなかそういう人は環境に恵まれている方ですね。
偉くなるとそういう感じになるんでしょうね。
パワーバランスもありますし、下の方は割と与えられたテーマをやらざるを得ないというのがありますよね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
上から降ってくるだけの仕事ってモチベーション面で難しそうですよね。
TK
TK
やっぱりお金をもらいながらやっていたのでね。
まあ、それはもはや研究に限らないでしょうけどね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
研究のイメージ変わりました。
でも、お金をもらってやっているんですもんね。必ずしも自分の興味や関心がある分野で研究できるとは限らないですよね。
それでは、職業選択に悩んで吃音ラボを見てくれる人もいると思うのでお聞きしたいのですが、コミュニケーションが苦手だから研究職になろうと考えている人もいるのではないかと思います。ズバリ、研究職はコミュニケーションが苦手でも問題ない職ですか?
TK
TK
あ〜それはすごい微妙な……。周りを見ていると、すごい実績があって活躍しているような研究者は、かなりコミュニーケーションをとっています。
色々な知り合いの先生や研究者を増やしていって、色々コミュニケーションを取りながら自分の研究もブラッシュアップしていて。やはり、ひとりだけで研究をやっているとどうしても煮詰まってきてあんまり上手くいかなくなってしまうんですよね。
アイデアを得るために仲間とディスカッションをするというのがすごい大事で、自分のテーマだけに絞って研究するのは悪くはないんですけど、やはりディスカッションしながら研究をやる方が絶対に捗ると思うので、ひとりでやるだけよりかは、コミュニケーションを取りながらだと人脈も広まりますし、その方が面白いと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
やはりコミュニケーションはどんなところでもあったほうがいいというのはありますよね。研究職だからといって、コミュニケーションがなくてもいいとまではなかなか言いきれないのかなと。
以前の研究のときって、自分の吃音の症状について周りに言っていたんですか?
TK
TK
あーまあ(吃音って言わなくても)わかりますよね。
私の環境はちょっと特殊で臨床心理士という心理学の専門の研究室だったので、割と理解はあったというか。まあでも良くも悪くも「吃音だから」特別扱いされることはなくて。自分としては吃音で話す経験がなくうまく話せない、うまくコミュニケーションが取れなくて、実習もうまくいかないということがあったので。
普通の人として扱われるので、吃音があろうがなかろうがちゃんとコミュニケーションは取らないといけないし。(吃音と)言わなくてももちろんわかっちゃうので、あえて言うことはありませんでした。
「吃音」をテーマに研究をしていたくらいなので、明らかに「吃音があって吃音の研究をしているだろう」と思われていたはずです。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
TKさんの周りにいた人は吃音という存在を知っていたということですよね。
TK
TK
私が吃音をテーマに研究していたので、「吃音とはこういう障害です」と言った上で研究をやっていたので、吃音ということは知って……というかむしろこちらからゼミの発表の場で間接的に知らせざるを得なかったというか。
でも、あくまで研究対象として「吃音」を扱っていたので、研究の一般的な内容は言うんですけど、個人的な吃音に対して言及したことはないです。
まあ研究のテーマとして吃音の話をしたことはありましたけど、個人的に吃音でどう悩んでるかとかそういうのを話したのはかなり個人的な間柄の人だけでしたかね。
やはり公衆の場で個人的な話をする訳にもいかないですので、「吃音とはこういう障害ですよ」という一般論は言ってたいという感じです。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
それでは、吃音ということは暗黙で知ってもらっていた上で、良い意味でも悪い意味でも特別な配慮をしてもらうことはなかったってことですね。
TK
TK
特別な配慮というか、普通の人と同じ感じで扱ってもらっていましたね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
これは他の吃音者の方にも聞いているんですけど、吃音に対する考え方は人それぞれ違うなと最近よく感じていて、吃音を広めるべきだという人と、そっとしておいてほしい人がいて、TKさんはどう思いますか?
TK
TK
私は環境が特殊で、吃音の研究とかやっていたこともあって、周りが基本的に吃音について知っている人で、良くも悪くも吃音を考慮されない環境でした。
よく聞くのが、電話とかで声がどうしても出なくて職場とかで怒られる。それは絶対ね、まず周りの対応って大事で。周りの対応でさらに悪循環が起こっちゃうと思うので、まず困っている人は周りに伝える方がいいですよね。周りからもし理解がなければ、積極的に伝えていくしかないですよね、きっと。秘めちゃうとまた悪循環に陥ってしまって、自分としては困っているけど伝えられてなくて、さらに吃音で引っ込み思案で余計に伝えられない悪循環になっちゃいそうなんで。言える環境なら積極的に言っちゃう方が結果て的に楽になるんじゃないんですかね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
TKさんの環境は特殊だと思うので、一般的には周りから配慮が得られなくて困っているなら自分から積極的に伝えていく必要があるかもしれないですよね。
最後に、TKさんは吃音当事者で、さらに吃音の研究もされてきて、吃音に対する考えは色々とあると思うんですけど、吃音者の方になにかメッセージがあればよろしくお願いします。
TK
TK
自分自身の体験で思ったのが、一般論として「弱い人は優しい」「弱みがある人ほど人間として深みが出る」「弱い人ほど人の気持ちがわかる」というのがあって、僕も昔はそれはただの一般論だと思っていて。
だから別に弱くなくても、強い人でも、人の気持ちがわかる人はわかるし、そういうものだと思っていました。
でも周りを見ていると、弱い人にしか本当にわからないものってあるのかなって思い始めてきて、そういう意味では吃音で自分自身大変なこともかなりあったので、弱いゆえに弱い人の気持ちが想像というかイメージできるみたいなところはきっとあるんじゃないかなと、最近思ってきて。
そういう意味でも吃音であることで、あまり同じ体験を自分の子どもにしてほしいとは全然思わないですけど、色々な経験をしてきたなりに結果的に得た想像力とか共感性とか(というとちょっとベタかもしれませんが)、そういう思いやりみたいなのは大変な経験した中で培われるものなんじゃないかなと、個人的に最近思っていたりします。
普通の人ではできない体験をしてきて大変な分、得たものもあったんじゃないかなと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
吃音があってよかったと思うことってほとんどないと思いますし、吃音を肯定的に捉えることが難しい方がほとんどだと思うんですけど、普通の人ができない大変な経験から得られるものもあるんじゃないかってことですね。そちらに目を向けられたらなと思います。
本日はありがとうございました!
TK
TK
ありがとうございました!
撮影後記

吃音当事者であり、研究者として吃音の研究に従事したこともあるというTKさん。吃音と脳の機能の関係性についてTKさんの見解を伺えて、これまでにない吃音の捉え方を知ることができて非常に興味深かったです。専門的な内容も多く、文字起こしの際には間違いのないよう調べながら書いていたのですが、おかげで瞑想やマインドフルネスへの興味が俄然湧いてきました。もちろん「吃音が治る」ということを言っているものではないのでそこはご了承いただきたいのですが、吃音による予期不安等には効果が見込めるのかもと個人的に思いました。
また研究職はコミュニケーション力をあまり必要としないイメージが勝手にありましたが、やはり円滑なコミュニケーションができるに越したことはないようです。
TKさんは博識な方で、撮影時間も1時間以上を越してもお話を聞ききれず、まだまだ興味深い話をお持ちのようでした。
またゆっくりとお話を伺いたいなと思います。

取材・撮影・編集=灰根