インタビュー

吃音当事者インタビュー S.O

吃音当事者インタビュー

吃音を持ちながら日常生活を行っている当事者さんに職場での体験談や吃音をどのようにカバーしながら仕事をしているかや自身の吃音歴などのお話を伺っていこうと思います。
またお話頂いた内容で吃音改善に関わる内容が出てくる場合もありますが、あくまで個人の考えになりますのでご理解ください。

灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
本日はよろしくお願いします。
S.O
S.O
よろしくお願いします。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
まず初めにお名前とご職業を教えてください。
S.O
S.O
名前はS.O、今22歳で専門学校に通っています。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
専門学生でご就職はこれからということですね。
どんなことを学ばれているんですか?
S.O
S.O
福祉の学校に通っていて、自分が受けている学科というのが社会福祉学科になります。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
社会福祉学科では具体的に何を学んでいるんですか?
S.O
S.O
だいたい福祉というと介護をイメージされると思うんですけど、社会福祉というのが障害分野であったり、精神障害の通院の支援相談であったり、児童の分野でいうと児童養護施設だったりとか。
あと、非行少年が更生施設で働けるように勉強するところになります。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
障害者の方のイメージもあったんですけど、非行少年も福祉の範囲に入るんですね。
ご希望の職業は、そのまま福祉関係のお仕事になるんでしょうか?
S.O
S.O
はい、そうです。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
では、現在学ばれていることを活かしてご就職される予定なんですね。
なぜ社会福祉分野の道へ進もうと思ったんですか?
S.O
S.O
自分は小学生の頃から中学校卒業まで「ことばときこえの教室」という通級支援に通っていて、そこの自分の支援を担当していた指導員の方の影響ですね。
子どものとき指導員の方がすごい優しく笑顔で接してくれて。
自分は小学校の6年生のときに不登校になっていて、学校には行けないんだけれども、そのことばの教室には通っていて。
そこ以外では全然笑えていなかったんですけど、その人がすごい和ませてくれたり笑顔にしてくれて。
自分も子どもの頃にそういう影響を受けていたから、自分も子どもに関われる仕事に就きたいなと思って、社会福祉分野を目指しました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
すごい良いお話ですね。
S.Oさんが不登校だった時代にお世話になった先生に憧れて、自分も同じように子どもに関われる仕事をしたいと思って社会福祉の道を目指しているんですね。
S.O
S.O
そうですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
差し支えなければお聞きしたいのですが、不登校の原因に吃音は関係していますか?
S.O
S.O
そうですねえ……吃音だけではなかったと思いますし、自分にも問題があったとは思いますけど。
いちばんキツかったのはやっぱり吃音ですかね。
よく言われる国語の授業での音読だったりとか。
かなり前の記憶なんですけど自分でも覚えていて、授業参観の日で、国語の授業で、色んな保護者の方もいて。
みんな持ち回りが来たら発表していく感じで自分の番になったんですね。
その当時から難発で、「……うぅぅ…」って感じになり、それをみんなが笑ったりとか囃し立てたりとかして。
もう今だから笑い話なんですけど、「こいつ喋れなーい!」みたいな感じで言われて、それに自分がキレて。
そのときは吃音も出ずに流暢に「ぶっころしてやる!」って言ったみたいなんです。
親はそれを笑ってました(笑)
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
授業参観の場でそれは本当に辛いですね。
そのような経験があったとは思えないほど、今のS.Oさんは明るくて朗らかな印象なので驚いています。
そういったことがあって、不登校の時代もあったなかで、中学生からはまた学校に行けるようになったんですか?
S.O
S.O
そうですね。
中学校になると、他の小学校の子も来るじゃないですか。
そこで仲良くなった友達もいて。
なんだろう…自分のモットーで「みんなから好かれなくてもいいじゃないか」と思うようになって、自分をわかってくれる友達といれば学校は通っていたので、少しずつ不登校もなくなっていきました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
中学生のときからそういう考え方ができるのはすごいですね。
大人になって世界が広がってそういう考え方ができるようになることはあると思っていましたけど、学生だったらやはり「みんなに好かれたい」と思ってしまうものなのかなと考えていたので。
「みんなに好かれなくてもいい」と思えるようになったきっかけは何かあったんですか?
S.O
S.O
そうですね。
やっぱりさっきも言ったんですけど、言葉の教室の指導員の方が。たぶん少しずつ理解していったと思うんですけど、「人は色んな人がいっぱいるんだから、自分が本当に心から仲良くなりたい人と関わればいいんだよ」と言ってくれて。
その影響があります。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
本当に素晴らしい方ですね!
そういう人と出会えることで、症状や状況は変わらなくても、捉え方が変わったり視野が広がったりしますよね。
小学生の頃と現在では吃音の症状に差はありますか?
S.O
S.O
めちゃくちゃあります。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
もっと酷かったんですか?
S.O
S.O
もっと酷かったです。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
こうしてお話ししていても今は吃音がほとんどわからないですもんね。
症状が改善したのは、何か具体的にしたのか、それとも心境の変化によるものですか?
S.O
S.O
中学校のときは「好かれようとしなくてもいい」と気持ち的には思えていたんですけど、それでも吃音は出るわけで、そのまま吃音が出ているまま中学校を卒業して。
高校に入って、たまたまなんですけど、中学校のときから仲が良かった友達と一緒の高校に通うことができて、そういう心の余裕というかゆとりもあって、高校生のときから今ぐらいの吃音で過ごせていますね。
特に何かやっているわけではないです。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
心理的な影響でそこまで吃音の症状に変化があったんですね。
その信頼できる仲の良いお友達には吃音があることは伝えているんですか?
S.O
S.O
実際に言えたのはまだそんなに時間が経っていなくて、去年くらいのときで。
おそらく吃音の難発は(当時から)出ていたと思うんですけど、たぶん興味がなかったのかなって(笑)
会話ができているから良かったのかなと思っています。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
そのときのお友達の反応はいかがでしたか?
S.O
S.O
自分は結構勇気を出して言ったつもりだったんですけど、「あ、そうなの?」みたいな。
なんかちょっと呆気にとられたような感じではありました(笑)
でもこれから、向こうがどう思っているかはわからないですけど、僕はずっと一緒にいたいと思えている友達なんで、「そろそろ言えるだろう」みたいな感じで告白しました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
意外と相手の反応はあっさりしていたりしますよね(笑)
でも、ずっと一緒にいたいなんて思えるなんて、素敵な関係ですね。
吃音の存在は、ことばの教室で知ったんですか?
S.O
S.O
その前から自覚症状はあって。
いちばん古い記憶で一年生のときに音読で。「なかなか言葉が出ないなあ」と思って親に話をしたら、「あんた吃音なんだよ」というふうに言われて知って。
一年生のときだったからことばの教室に通っていても、「自分はなぜここにいるんだろう?」という感じでした。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
吃音を告白してみて心境の変化はありますか?
気持ちが楽になったとか。
S.O
S.O
ありますねえ。
やっぱり自分の中で吃音を気にしないで話せる相手というのが、ことばの教室の先生だったりとか、学校の先生にも比較的に恵まれていて吃音を受容してくれいたりとか、あとはやっぱり親でした。
そして、友達に告白をしたことで、同じ類、同じように安心できる相手になりました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
それでは告白して良かったですね!
吃音を気にせず安心して話せる人が増えるのは嬉しいことですよね。
ご両親の吃音に対する理解はいかがでしたか?
S.O
S.O
そうですねえ。
家では盛大にどもっていて。ある日の夜に吃音の話をしていたときに、「あんた外でもそんな感じなの?外では出てないの?もし出てたとしたら気にする?」みたいなことを言われて。
「ずっと長く関わっていく人でもないのであれば、そんなに気にしなくていいんじゃない?」みたいな、自分にとってこれからも関わっていきたいか、関わりたくないか、線引きをしたら、吃音も軽くなっていきました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
なるほど。
一緒になって吃音に対してどう付き合っていくかを考えてくださるご両親なんですね。
S.O
S.O
そうですね。
両親の影響はとてもでかくて。「どもったっていいじゃない」というスタンスだったので。
今でもやっぱり吃音の悩みはあって、何かあったら必ず相談するっていう感じで。
「あなたが吃音になったから悪いんだよ」みたいなことは言われていないので、とても恵まれているなぁって。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
どもってもいいと言ってくれるご両親だったんですね。
ご両親が相談できる相手だというのは心強いですよね。
学校の先生にも恵まれていたとのことですが、吃音のことを知ってくれていたんですか?
S.O
S.O
自分から言いました。
よく周りから見て朗らかで明るい印象があるって言われていて。
高校のときなんですけど、学年での行事とかあったりするじゃないですか、体験学習とか修学旅行のときとか。
自分の高校が分校というか兄弟校みたいなところに通っていて、本校が栃木にあって、栃木の本校に行って、栃木でお米の生産をしていて、そこで体験をしに行くんですけど、本校の校長先生の挨拶や本校の生徒さんとの交流の機会があって、「そこでの司会をやってくれね?」って言われて。
「でも先生俺吃音ありますよ〜。どもりますよ俺。」って言ったんですね。
そしたら「どもったっていいじゃないか。ここでの経験は絶対後に活きるよ。どもりだけが君を決めることじゃないだろ。」と言ってくれて。
確かに、スキルは上がるよなあと思ってやりました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
それでは先生は、S.Oさんの吃音を理解した上で経験としてやってみなさいと言ってくれたんですね。
それでもとても緊張しますよね(笑)
よく引き受けたなと思います。
現在は就職活動をされているとのことですが、就活で吃音については伝えていますか?
S.O
S.O
告白するというよりも、福祉を目指したきっかけが吃音で、自分がことばの教室に通っていたのがいちばんのきっかけなので。
志望動機あるじゃないですか、そこに自分が吃音であることを書いて、吃音への支援の段階で目指すようになったので、告白するというよりは書いて伝えています。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
書類にあらかじめ記載して、あくまで社会福祉を目指しますという過程で吃音を伝えているということですね。その伝え方であれば、とくにネガティブに相手に伝わらないかもしれませんね。
就職先で、吃音に対してこうした配慮がほしいというような要望はありますか?
S.O
S.O
基本的にこうしてほしいとかそういうのはなくて、吃音ってやっぱり体調とかその日の気分とかあるじゃないですか。
その特定の場面があった場合は、「今日ちょっと話せないです」とか「ちょっと時間ください」みたいなことは言っていきたいなと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
では、基本的には仕事に制限はせず健常者と同じようにお仕事をしようと考えているんですね。
社会福祉のお仕事は、吃音者のサポートをやりたいなど希望はあるんですか?
S.O
S.O
子どものときの影響を受けた指導員さんに憧れているので、働く対象は児童分野がいいなと思っていて。
具体的にいうと児童養護施設を希望していて、児童養護施設って親の都合で来る子どもが多くて、その中には発達障害とかを持っていて親がもう無理ってなって児童相談所に渡して、そういう子が入って来るので…。
その中には吃音もいると思うんですよね。
そういう子どもに自分がその指導員にやってもらったことをそのままやっていきたいなあと思っています。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
本当に指導員の方に助けられた原体験がS.Oさんの中でも大きいんですね。
吃音に限らず、色々な子どものことをサポートしてあげてほしいと思います。
吃音ラボを知ったのはどういう経緯ですか?
S.O
S.O
専門学校で福祉の勉強をしていて、例えばアルコールや薬物の依存症の人たちが、患者さんが集まって、今で言う自助グループがあることを授業で知って、学校の帰り道に電車の中で何気なく、「そういうのがあるんだったら吃音の自助グループもあるんじゃね?」と思って、それでツイッターで吃音と検索したら、吃音の人がたくさんいて、吃音ラボとか言友会だったりとかそういうのを知って。
自分もそういうのに参加してみたいなと思って、今日応募してみました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
なぜ吃音ラボのインタビューを受けようと思ったんですか?
S.O
S.O
理由はたくさんあるんですけど、いちばんは自分と同じように吃音に困っている人の励みになればいいなというか。
今は辛くてもそのうち絶対なんとかなるっていう。
周りであったりとか環境であるとか、あとは自分の気の持ちようというか、ちょっとでもポジティブに考えて行動すればなんとかなるんだという想いを伝えたくて。
あとは、自分のためなんですけど、今は就職活動中で、知らない人や初めてあった人にどうやって自分の想いを伝えて行くんだ、吃音がありながらもどうやって話せばいいんだ、どうしたら上手く話せるんだ、その練習がしたくて今日来ました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
S.Oさんは本当にポジティブな方ですね!
インタビューといっても僕が普通に楽しくお喋りしてしまって緊張感がないので練習になっているかはわかりませんが(笑)
最後に観ている方に何かメッセージをお願いします!
S.O
S.O
最初の冒頭でも言ったんですけど、中学校のときは吃音があるという現状であまり考えられないと思うんですけど、自分にとってこれから先も関わっていく人なのかどうかで考えてもらって。
自分が吃音があるから喋りたくないと思うんじゃなくて、本当に自分がこの人と関わっていきたいと思った子が現れたとしたら、「どもったっていい」って思いでどんどん話していく。
どもったのを相手側が感じて「こいつ変だ」と思われて離れていったときは、その程度の人というか自分のことをわかってくれていない人だと思うようにして、どんどん積極的に話していってほしいなって。
なんだろう、自分は今これだけ喋れているから信じられないと思うかもしれないけど、ちょっと考えてみてほしいなあと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
ありがとうございました!
S.O
S.O
ありがとうございます!
あとこれだけ言わせてください!
この前小学生のときに授業参観のときに囃し立ててた友達に偶然会ったんですね。
そしたら向こうは俺にどもりがあるのを全然忘れてて。なんか普通にフランクに話しかけてきていて。
自分が思っていたよりやっぱり相手は深く考えていなかったんだなあってすごい思いました。なんだよって思って!
不登校なんだったんだろうみたいな(笑)
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
こっちは本当にそれに真剣に落ち込むし悩むし考えて、学校に行けなくなったりするわけじゃないですか。
向こうから見たら自分はそう見えているんだって。
でもまあ、これはあまりいいことじゃないですけど、言った方やいじめた方はそんなに気にしていないんですよね。
S.O
S.O
そうなんですよねえ。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
された方は気にしているけど。
向こうからしたらそんなに悪いことをしている気もなくて。
だから受け取る方もそんなに真剣に受け取らなくていいのかもしれませんね。
撮影後記

社会福祉の専門学校に通い、いずれは児童養護施設での就職を目指しているS.Oさん。
小学生の頃には不登校の時期もあったというのが信じられないほど、明るく朗らかで、爽やかな笑顔が印象的な方でした。
ことばの教室で出会った指導員の方に憧れ、ご自身も同じように児童のサポートをしたいという思いをもっているお話を聞いて大変感銘を受けました。
「どもってもいい」、「みんなから好かれなくてもいい」と思えるようになるのは簡単なことではないかもしれませんが、自分のことを理解して受け入れてくれる人がいれば、S.Oさんのように明るく朗らかに生きられるのかもしれません

取材・撮影・編集=灰根