インタビュー

吃音当事者インタビュー 大原

吃音当事者インタビュー

吃音を持ちながら日常生活を行っている当事者さんに職場での体験談や吃音をどのようにカバーしながら仕事をしているかや自身の吃音歴などのお話を伺っていこうと思います。
またお話頂いた内容で吃音改善に関わる内容が出てくる場合もありますが、あくまで個人の考えになりますのでご理解ください。

灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
本日はよろしくお願いします。
大原
大原
よろしくお願いします。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
まず初めにお名前とご職業を教えてください。
大原
大原
大原です。
仕事はバスの運転手の見習いをしています。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
見習いというは正式なご就職はこれからということですか?
大原
大原
バスの会社に入社したんですけど、まだ運転の経験がないってことで見習いとして勉強と雑用関係の仕事を今はしています。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
なるほど、ではバス会社に就職はされていて、現在は見習いとしてお仕事をされていると。
いずれはバスの運転手としてお仕事をされる予定なんですか?
大原
大原
自分が子供の頃からの夢がバスの運転手で興味があったので、いずれはそういう仕事をしてみたいと思っていて。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
子供の頃からの夢だったんですね!
バスの運転手になりたいと思ったのはどういう理由なんですか?
大原
大原
自分の実家が、結構山の上というか丘の上にありまして、毎日バスで通学と仕事も当時していたので、結構バスを使っていたんですね。
乗り物が元々好きだったので、バスの運転手に職業に憧れを抱いてですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
日常的にバスを使う機会が多かったんですね。
現在は運転手の見習いということですが、どうすれば正式に運転手としてお仕事ができるようになるんですか?
大原
大原
今自分が入社して教官というか運転手としてデビューしていいと許可をする人がいまして、その人から許可をもらうまでは練習期間は続くと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
では、その方に認められて初めて運転できるようになるんですね。運転手って、運転ができればやらせてもらえるというわけではないんですか?筆記試験だったり、バスの運転手と吃音で思ったのが車内のアナウンスもしなくちゃならないとかあるんですか?
大原
大原
いま入社した会社には吃音があることは言ってから入りました。
アナウンスの面はテープの自動放送で行うので心配はしなくていいですよという風に言われていまして、運転の方はバスを運転する免許が他に必要で、教習所で4ヶ月で自分は免許を取りました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
あらかじめ吃音であることをお伝えしてご就職されたんですね。
大原さん以外の運転手の方もテープの自動放送によるアナウンスをしているんですか?
大原
大原
他の運転手は自動放送を流して、その後はやはり自分でも放送をするんですが、自分は「吃音で苦労があるだろう」ということで、そういう配慮をいただいて、できれば放送してほしいけどしなくても大丈夫ですって感じです。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
それでは吃音について配慮してくださっているんですね。
すごい良いですね!
なかなか職場で理解してもらって配慮をいただくのって難しいと思いますし。
夢だった運転手もアナウンスで諦めることなくお仕事にできそうですね。
あらかじめ入社前に吃音であることは伝えていたということでしたが、面接の段階でお伝えしていたんですか?
大原
大原
まず面接でも言いましたし、履歴書にもやはり「吃音ですけど大丈夫ですか?」みたいな文面で郵送で送りましたので、ダブルで吃音であるという確認はしました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
面接だけではなく履歴書にも記載していたんですね。
その上で採用になったと。吃音ということを伝えた上でちゃんとみてくれる企業がいるのは嬉しいですね。
大原さんがご自身の吃音を自覚したのはいつですか?
大原
大原
小学校の低学年のときに音読で順番がまわってきたんですけど、なかなか第一声というか言葉が出なくて「なんかおかしいな」と。
他の人はスラスラ読めているんですが、自分だけで出なくて、それからですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
音読がきっかけで自覚する人は結構多いですね。
吃音症と知ったのはいつですか?
大原
大原
吃音症と気づいたのは、高校生の時に親と病院に行きましてそこで耳鼻科の先生から「これは吃音症というものです」というのを聞きまして、そこで初めて知りました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
耳鼻科の先生による診断で知ったわけですね。
その後、吃音改善に向けて何か取り組みましたか?
大原
大原
高校生の時に精神科の方で不安を抑えるような薬を飲みつつ、吃音の教室がありましてそこにも通って平行して治すというか良くなるように自分で努力をしました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
改善の効果はありましたか?
大原
大原
薬の方は少ししか効果はなくて、吃音の教室の方は決まったフレーズであれば言えるようになりましたけども発表とかでは効果の方はなかったです。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
少し改善の効果がみられる部分はあったけど、思った以上ではなかったということですね。
小学生の頃から吃音があったとのことですが、ご両親の吃音への理解はいかがでしたか?
大原
大原
自分の父親も同じような話し方をしていまして、父親の時代は病気の分類ではなかったようで、自分が生まれてから吃音症というかそういう分類ができたみたいで、父親に「それは病気じゃないよ」と言われましたね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
お父様も吃音の症状を持っていて、どもることに対して「それはそういうものなんだ」と思っていたということですね。
今はお父様も含めどもることを「吃音症」というものとして認識されているんですか?
大原
大原
はい、そうですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
それでは特別喋り方について指導されるようなことはありませんでしたか?
大原
大原
「ゆっくり話す」とか「言うことを前もってちゃんと決めてから言いなさい」とか、治すようなことは結構言われていましたね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
そうなんですね。
僕も小学生の頃家で音読の宿題をすると親に言われることがありました。
大原さんはそのときはどう感じていたんですか?
大原
大原
そのときは自分でもどうにもならなかったんですが、そういう風に言われるので。
説明も自分ではできなかったので、やっぱり辛かったですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
そうですよね。自分でもなぜ喋れないのかわからないから辛いですよね。
学校の先生の理解はいかがでしたか?
大原
大原
小学生の頃の先生からは「吃音じゃないのか」と言われまして、高校生の時はまったく先生が吃音というものを知らなくて、認知度が無かったですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
自分からは吃音の症状を先生相談されたんですか?
大原
大原
小学校と高校の先生に入学する前に、吃音とは言ってなかったですが、自分が話すときに少しつっかえることは一応言っていました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
あらかじめ言葉ちょっと上手く話せませんよってことは伝えていたんですね。
高校生の頃の先生は吃音について知らなかったということですが、それによって何か嫌なことを言われたり間違った理解のされ方をすることはありましたか?
大原
大原
高校も音読がありまして、やっぱりつっかえちゃうんですね。
それで、「緊張しなくていいよ」とか「ゆっくり話して」とかそればっかり言われまして、ちょっとメンタル的にきつかったですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
向こうも善意で言ってくれていると思うんですけど、そういう問題じゃないですもんね。リラックスしようとしてもゆっくり話そうとしても、どうしようもないわけで。
現在の職場では吃音について伝えているということですが、職場での理解や、業務上で吃音による弊害を感じることはありますか?
大原
大原
社員の人数が結構多くて、ひとりひとりには「自分は吃音です」ということは言っていなくて、まだ数人しか言っていないんですけど、一部の人には「緊張してんのか」とかそういうことを言われたりしましたね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
人数が多いと全員に自分のことを知ってもらって吃音のことも知ってもらうというのは難しいですよね。
そのことでコミュニケーションが難しいと感じることもありますか?
大原
大原
そうですね。
他の人が雑談をしているのに自分がなかなか言葉が出なくてそれになかなか入れないとか、「お疲れさま」という言葉をつっかえたりとか、そういうところですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
やはりコミュニケーションで大変ところはありますよね。
そこは会社としても配慮するのが難しいところだと思いますし。
雑談や挨拶で弊害を感じているなかで、こうしてインタビューを受けるのって相当ハードルが高いと思うんですけど、なぜ大原さんは吃音ラボインタビューを受けようと思ったのですか?
大原
大原
飲食店とかショップに行って注文をするときに自分はつっかえながら注文していて、まだまだ吃音の認知度は低いなと思っていて、たまたま吃音ラボさんが吃音について認知を広める活動をされていると聞いて、自分も協力というか助けになりたいと思って今回応募しました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
「吃音ラボの助けになりたい」というお気持ち、大変ありがたいです。
こちらもより良い情報やコンテンツを提供できるようにがんばります。
吃音に対する考え方って色々あるんですけど、大原さんの中では吃音の認知度が広まって一般の人にも知ってもらいたいって思っているんですね。
大原
大原
はい。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
大原さんの中で吃音じゃない人にどのように接してもらいたいっていう考えはありますか?例えば、喋り終わるまで待ってほしいとか、言いたいことを察して助け舟を出してほしいとか、それとも紙に書いてコミュニケーションを取りたいとか。
大原
大原
「自分は吃音です」という手帳を作ってそれを見せて、「自分はこういう症状ですが待って話を聞いてください」という前置きをした上で話すと、自分のメンタルが楽に話せます。あとは、前も言ったんですが、話しているとき急かしてきたり「早く話せよ」と言われると自分はきついですね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
待って聞いてほしい、というのが大原さんが考える一般の人に希望するコミュニケーションということですね。
吃音であることを伝えることで精神的に楽になる部分があるんですか?
大原
大原
そうですね。
吃音というものを言わないと「緊張している人」みたいな間違ったイメージになっちゃうんで、吃音だってことを言っておく必要がありますね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
なるほど、間違ったイメージで思われないようにするためにも、自分から発信して正しく知ってもらう方が精神的にも人間関係の上でも良いということですね!
最後に見ている方に何かメッセージをお願いします!
大原
大原
今は吃音というのが国から認められているので、もっと自信を持って「自分は吃音を持っている」ということを人に発信していってもいいんじゃないかと思うので、皆さんも吃音を隠さないでどんどん言ってほしいと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
本日はありがとうございました!
大原
大原
ありがとうございました!
撮影後記

バス会社に就職し、現在は運転手の見習いとしてお仕事をされている大原さん。職場から吃音への理解を得て配慮してもらうことで、子供の頃からの夢だったバスの運転手になろうとがんばっているとのことでした。
職場で吃音の理解を得ることは簡単ではないことだと思いますが、大原さんが配慮を得られたのは、就職活動の時から自ら吃音であることを発信して、吃音を理解してもらう努力をしたからだと思います。
もちろんどんな企業、どんな人でも吃音を理解して受け入れてくれるわけではないと思いますが、自分で発信し、自分で道を切り拓くという大原さんの姿勢は、大変参考になりました。
バスの運転手としてご活躍される日を楽しみにしています。

取材・撮影・編集=灰根