吃音当事者インタビュー 宮川

当事者インタビュー
吃音とうまく付き合いながら日常生活を行っている当事者さんにフォーカスをあてて職場での体験談や吃音をどのようにカバーしながら仕事をしているかや自身の吃音歴などのお話を伺っていこうと思います。またお話頂いた内容で吃音改善に関わる内容が出てくる場合もありますが科学的医学的根拠はないあくまで個人の考えになります。言語聴覚士監修の吃音知識のコーナーで科学的根拠に基づく吃音の知識を得ることができます。

皆川(吃音ラボ編集部)
今日はよろしくお願いします。
宮川
はい!よろしくお願いします。
皆川(吃音ラボ編集部)
では初めに、お名前とご職業を教えてください
宮川
宮川と申します。仕事は知的障碍者の支援員をやってます。
皆川(吃音ラボ編集部)
では福祉系のお仕事なんですね!
具体的に支援員のお仕事はどんなことをされてるんですか?
宮川
そうですね。発達障害とか知能指数が低い理解力の低い方々の生活全般を見る仕事です。
だからまぁ生活全般を見るので、お金の管理とか行政の手続き代行とか、仕事してる方なら職場との調整役とかですね。
皆川(吃音ラボ編集部)
大変そうなお仕事ですけど、すごく社会的に意義のあるお仕事で、すごいなと思いました。そのお仕事は、どれくらい続けられてるんですか?
宮川
今五年目、今年度で六年目になります。
皆川(吃音ラボ編集部)
仕事中に吃音で、苦労することはありますか?
宮川
基本的に話すことがメインの仕事なんですけど、話すことに関しては今は大丈夫になってきてるんですけど、電話が…電話で外部の方と話す時とか社内で内線とかで苦労してます。
皆川(吃音ラボ編集部)
では仕事中は、毎日必ず電話対応があるってことですよね?
宮川
そうですね!
皆川(吃音ラボ編集部)
職場では、吃音をカミングアウトをしてるんですか?
宮川
言ってませんね。言った方がいいって周りから言われるんですけど、言ったからどうなるのって思って。
だからって電話取らなくていい仕事ではないのでね。事務職なら言えば電話取らないでいい配慮があるのかもしれないですけど、自分の場合は特にないので。
それにこういった専門職なので吃音を知ってますし、周りも気付いてるだろうなとは思います。
皆川(吃音ラボ編集部)
吃音を知っている人がいる環境でもやはり吃音があると伝えるのは難しいですか?
宮川
そうですね、
弱みを見せたくないって言うのもあるし、今更っていうか。まぁどもったら笑ってます!
皆川(吃音ラボ編集部)
吃音が原因で就活で苦労したことはありますか?
宮川
そうですね、面接ですかね。
前に郵便局員になりたいと思っていて。
配達員のバイトをしていた時に、配達先の人達と交流を持ててこの仕事いいなと思って。事務仕事とか嫌で、外に出て人と話す仕事が良くて、かといって接客ほどではなくて自分ひとりのペースで仕事するのがいいなと思って、郵便局員になろうと思ったんですけど筆記試験は受かります。
でも面接で落ちることが続いてそれで諦めた経緯はあります。悔しかったですね…
皆川(吃音ラボ編集部)
面接はどのように上手くいかなかったなど覚えていますか?
宮川
まずは面接ってマニュアルあるじゃないですか?
入ったら言う言葉失礼しますとか最初名前いったりとかそこもそうですけど、面接の練習もしっかりするんですけど思ったように言えない。
そこがやっぱり悔しいというか、あれだけ練習したのにって思います。
皆川(吃音ラボ編集部)
事前に吃音があることを履歴書などに書いたことはありますか?
宮川
書けないですね。
書いたらその時点で落ちると思いますし、かといって面接でも言えないですからね。だからまぁ、隠してやってました。
皆川(吃音ラボ編集部)
そういうものなんですかね。でも確かに一般枠ですし、そういう見られ方する可能性も大きいのかな?と思います。仕事以外の電話でも、苦労することはありますか?
宮川
苦手です。息子がいまして、保育園に行ってるんですけど、保育園への連絡はすべて妻に任せています。
皆川(吃音ラボ編集部)
それはでも夫婦で助け合ってるって事だしいいですよね!苦手なことを代わりにしてくれる人がいるのは助かりますよね!
友人への電話は吃音を気にせずかけることはできますか?
宮川
携帯電話で電話するじゃないですか?自分の名前が表示されて、自分だとわかった状態で出るのでそれは大丈夫です。
皆川(吃音ラボ編集部)
たしかに不思議な安心感ありますよね(笑)では、名前に苦手意識があるんですか?
宮川
そうですね。以前は名前を名乗ることに対して苦手意識はなかったんですけど、ただ名前を言ってつまることがあってそこから意識して名乗ることが苦手だと思ってしまって、今は苦手になってしまいました。
皆川(吃音ラボ編集部)
やっぱり一回の失敗が結構吃音って影響でますよね。良くなったと思っても極端な話100回うまくいってても1回の失敗でまたひどくなるみたいな。ところで宮川さんは何歳頃から吃音を自覚し始めたんですか?
宮川
22歳位からです。
皆川(吃音ラボ編集部)
大人になってから?そうなんですね!それまでは吃音の症状は全くなかったんですか?
宮川
全くなくて高校の頃とか全校生徒の前で部活の勧誘の挨拶したんですよ。
あの時とかは、どういう内容を話そうかを考えて、今は吃音になったので言えるだろうかを考えています。
話す内容は完璧に備えていて、言えるかどうか心配。当時はどういった内容を話そうか、言えるのは分かってたので、その気持ちの違いはありますよね。
皆川(吃音ラボ編集部)
そうなりますよね。大勢の前での発表は話す内容よりも吃らず話せるのかと考えて頭がいっぱいになります。
では最初に言葉が出にくいなと感じた場面は、覚えていますか?
宮川
なんですかね。気づいたら吃音になっていた。どもるようになっていた。っていうのが正直なところで。
なったきっかけだと思うのは職場のストレス。
ちょっと苦手な先輩と営業周りに行っていて、なにか話さなきゃという話すための緊張というか、そういうことがきっかけなのかな?と思うんですよね。
明確なきっかけは分からないですけどね。
皆川(吃音ラボ編集部)
話すことにそこで緊張感を持つようになったんですもんね!なにか吃音になるきっかけがそこにあるのかもしれませんね!社会人になり17年経って、様々な職種で働く中で吃音に対する考えは変わってきましたか?楽になったとか年々キツイよとか。
宮川
最初はなんでどもるんだろう。吃音って言葉をしらなくて。
どもることに対して知りたくなかったんです。病気とかじゃないかなと思って逃げまくてったんですよ。
ただ自分ではなんとかしようと思っていて、自分なりに発声練習したり発表前は練習したんですけど、吃音って言葉を知らないままずっと過ごしてて、で本気で直そうと思ったのは子供が生まれてからなんですよね。
吃音って子どもにうつるのかな?自分の話し方をマネされたらまずいなと思って、そこから治療法とか本読んだり、検索したりして言友会とかに参加したりしてやっと吃音に対して色んなことを学んでいった感じです。
最初はどもることがなにか知らなかったんですけど、吃音っていう病気なんだってことで正体が分かったので、そこからどうしよう?治るのかな?治った人もいるんだ、なら頑張ってみようかな?と思ってそれで前向きになってきて今の状態です。
皆川(吃音ラボ編集部)
そうなんですね!でも確かに遺伝は多いっていいますよね!
でも小さいうちは治せる確率が高いみたいなので、もしお子さんが吃音になったとしても宮川さんなら前向きに治療ができる環境をお子さんに作ってあげれそうですね!いまは、吃音があって避けてしまう場面はありますか?
宮川
一番は電話ですかね。
やはり人前で電話をかけることは失敗するのは見られたくないって思いがあって、職場では人がいなくなった所を見計らって電話かけたり、携帯電話だったら自分の番号登録してる人ならわかってくれるので、そのまま電話かけたりします。
不思議なんですよね。自分だとわかってる状態で電話に出てくれる人になら普通に名前言えるんですけど、そうじゃない時だと言えなくなるんですよ。
皆川(吃音ラボ編集部)
それは本当にありますよね!不思議です。同じ電話なのになんでできないのかと疑問でいっぱいです。
では友人などと話してる時どもってしまった時とかあると思うんですけど、そんな時はどんな風に接して欲しいと思いますか?
宮川
そのままにして欲しいですね。スルー!!今のままでいいし笑ったら笑い返せばいいし…噛んじゃったって(笑)
皆川(吃音ラボ編集部)
確かにそれが一番いいですよね!友人なら変な気を遣われてもって思いますしね。では吃音者の求める合理的な配慮ってどんなことだと思いますか?
宮川
人それぞれじゃないですか?合理的配慮って障害によっては、筆談を求めるじゃないですか?わかりやすく説明してくださいとか。
吃音は程度によって違うじゃないですか。そこが難しいなと思います。
皆川(吃音ラボ編集部)
人それぞれ症状が違いますし、苦手な場面も違いますもんね!宮川さんは苦手な音ってありますか?
宮川
そういうのはないです。
皆さん流れとしては苦手だなって思って、段々その音が苦手になってきて、どんどん広がっていくと思うんですけど自分はそういうのなくて、苦手なフレーズですね。
名乗ったりとか会社名とか過去に言って失敗したこととか。だから苦手な音っていうのはないですね。
皆川(吃音ラボ編集部)
たしかに音よりもフレーズって人は多いですよね。まぁダメな時は全部ダメだったりするんですけど(笑)では友人などに吃音を隠しているのはなにか理由はあるんですか?
宮川
弱みを見せたくないのと今更かな?って。
皆川(吃音ラボ編集部)
付き合いが長くなるとなかなかそういう話はできないですよね!では、誰にも吃音があることは話したことないんですか?
宮川
妻にだけ言ってます。言友会はいる時にこういう活動に参加したいからたまに休みの日出かけるよって事前に伝えてます。
皆川(吃音ラボ編集部)
奥さんには、結婚前に吃音ってことは話すこともなかったんですか?
宮川
言ってなかったですね。ただ結婚式のスピーチで盛大にどもってしまったことは自分の思い出したくない歴史ですね。
皆川(吃音ラボ編集部)
そうだったんですね。似たような経験があるのでその気持ちは良くわかります。
ではスピーチなど大勢の人が見てる時みたいな場面とか、吃音が出やすい場面などはありますか?
宮川
電話の場面以外だと名乗る場面、初対面の人に名乗る場面で昔は言えたんですけど、一回の失敗から意識してしまって今は苦手で、そこさえ過ぎてしまえば比較的話せるんですけど。
あとこの言葉を言おう言おうって意識が強すぎると言えなくなってしまって、改まった場面でこの決まった言葉を言わなきゃって思いが出てくるとだめ、でアドリブきいたりあまり構えてない場面なら言えますね。
皆川(吃音ラボ編集部)
苦手な言葉って構えてしまいますよね。意識しないようするって頭ではわかっていてもこれは本当に難しいと思います。宮川さんは20歳を越えてから吃音になったってことは、以前の発話の感覚は覚えてますか?幼少期から僕はどもっていたので全然その感覚がなくて。いつも話す不安ばかり考えてました。
宮川
よく言われるのは昔の記憶があるから、ちゃんと話してた記憶があるから大丈夫なんじゃないの?と言われるんですよね。それを思い出していけばいいんじゃないの?と言われるんですよ。
たしかに記憶はありますよ。あの感覚に戻ればいいんだなって。でもそれが難しい。
皆川(吃音ラボ編集部)
本当にそれって不思議ですよね。初めて言葉が出にくいってなった日の感覚とかってでも同じなのかもしれないですね。小さい時からでも大人になってからも、僕も気づいたら吃音だったってことは同じですし。社会人になって吃音になり、そこから今の仕事を選んだきっかけはあるんですか?
宮川
人と関わる仕事が好きなので。
性格は元々社交的な部分もあると思いますし、一回本当に吃音がひどくなってた時期があって、注文とかもできない時があったんですよ。
そこまでひどい時はもう自分はこの仕事無理だなって思った時に、人とあまり話さない仕事で工場系とかの仕事にいったことあるんですけど、やっぱりなんか違うなって。
この仕事を一生続けていくのは難しいなと思って。それで接客ほどじゃないけど福祉の仕事。
人と関わってお手伝いしたいなと思って、最初は介護から初めてそこで色んな方々と出会って…ここで言うのもあれなんですけど、介護って亡くなっていくんですよ。
どんどん機能が落ちていく人を見ていくのは辛いんですよ。
だから逆に若い障害を持った方々を自分の支援で幸せにしていきたいと思って、勉強して今の仕事に就いたんですよね。
元々の性格がこういった性格だから今の仕事はすごく合ってるなと思います。
皆川(吃音ラボ編集部)
友人で看護師の仕事に就いている方がいるんですけど、同じようなこと言ってました。大きな病院で亡くなっていく人がやっぱり多いらしいんですよ。だから人が亡くなるって感覚が当たり前になるっていうか。そういう辛さはすごくあるって聞きました。
若い障害を持った方々を自分の支援で幸せにしていきたいって本当に素敵なことですね。同じことを思って行動に移せる宮川さんはすごいなと思いました。
宮川さんは社会がどの様に変われば、吃音者が生活しやすくなると思いますか?
宮川
どうなんですかね。
例えば精神病でうつ病とか昔は皆さん知らなかったと思うんですけど、今はすごく配慮されてるじゃないですか?
あそこまではいかないでいいと思うんですよ。あそこまで広まらないでも法的な行政的な面で配慮はあった方がいいと思います。
重い人なら障害者手帳を取りやすくして、ちゃんと障害者雇用として話すこと電話とかが苦手だったらそういうことしないでもいいように配慮して、障害者雇用として働きやすくなる社会の仕組みが作れればよくて、一般的な認知はそこまで。
行政と雇用する側が知っていればいいのかな?って。
やっぱり知られたくない人もいますし。そこは難しいんですよ。
話すことが特定の場面だけなんとかなればいいって人が多いじゃないですか?うつ病とかならちょっとした配慮が大事かな?と。休んだりすること多いですし体調崩しやすい方も多いから世間一般的に知られた方がいいし、接し方ひとつで精神的に落ち込んだりするから皆さん知識を持った方がいいって思いますしね。
吃音はほっといて欲しい人もいますし、逆に気にされすぎると惨めに感じてしまう人もいますからね。
皆川(吃音ラボ編集部)
そうですよね。話すの苦手でも人によって全然求める事が違いますよね。
筆談でってほどでもないし、例えば僕ならですけど、注文とか言えなそうな言葉とか指差し頼んだりするんですけど言えそうな言葉は自分で言いたいって思いますし。中には筆談がいいって人もいると思うんですよね。だから吃音の中でも細かく分けて配慮されるのがベストだとは思うんですけど、そんな判断って誰がするんだろ?って話になりますし、難しいですよね。では最後に、吃音で悩んでる方特にこれから仕事を始めようとしてる年齢の方に向けてメッセ―ジをお願いします。
宮川
そうですね、
まぁ皆さん苦手な部分はあると思うんですけど、仕事は自分のやりたい仕事はチャレンジして欲しいです。
吃音を持ってるからって…まぁ本当に難しいこともあると思うんですけど、逃げない。自分は一回吃音があってやりたくもない仕事を一回してやっぱり違うなと思ったのでやっぱり自分のやりたいことは目標をもってやってほしい。
あと社会参加もして欲しい。自分も吃音があっても社会人サークルとか行ってたんですよ。
そこで不特定多数の人と知り合ったりとかしたり。そういう場にも積極的に行って欲しいなと。
自分の気持ちに正直になってほしい。
吃音があるなら閉じこもるんじゃなくていろんな活動に参加したりして、いろんな活動に参加して欲しいなと思いますね。
だから結婚とかも仕事もできるし、吃音を持ってるからって諦めることはないのかな?と思います。
でもどうしても逃げられない発表の場とかは、出てくるんですよ。
その時はその時でまた考えればいい。とりあえずやってみようって言うのが自分の考えですかね。
吃音をもって日々不安感や恐怖心と戦ってると思うんですよ。
それでもちゃんとした目標もっていれば、幸せになれると思います。
あと吃音は完全には治らないとは思うんですけど、ある程度改善はできると思うんですよ。
だからそこらへんは自分なりのやり方を見つけていけばいいのかな?と思います。
皆川(吃音ラボ編集部)
本当に人生の先輩として前向きなメッセージをありがとうございます。いま吃音があって仕事選びに悩んでる人には、一度はちゃんとやりたい仕事にチャンレジして欲しいですね!うまくいくいかないは別としてやっぱりその姿勢が大事ですよね!
インタビューご協力ありがとうございました。
宮川
はい。ありがとうございました。
撮影後記
社会人になってから吃音になったとの話を聞いて、珍しいなと思いました。自分が流暢に話せている記憶があるのに話せないという感覚は、大人になってから吃音になった人しか分からない苦しみだと思いますし、吃音になるきっかけは本当に様々なことなんだろうと推測できます。
宮川さんの吃音で一度はやりたくない仕事にも就いてみたけど、やはり自分のやりたいことをやろうとチャレンジして行く姿勢を見習いたいと思いましたし、吃音で仕事選びを悩んでる方に向けて強い思いを感じました。

取材・撮影・編集=Yuki Minagawa