吃音当事者インタビュー KH

当事者インタビュー
吃音とうまく付き合いながら日常生活を行っている当事者さんにフォーカスをあてて職場での体験談や吃音をどのようにカバーしながら仕事をしているかや自身の吃音歴などのお話を伺っていこうと思います。またお話頂いた内容で吃音改善に関わる内容が出てくる場合もありますが科学的医学的根拠はないあくまで個人の考えになります。言語聴覚士監修の吃音知識のコーナーで科学的根拠に基づく吃音の知識を得ることができます。

灰根(吃音ラボ編集部)
本日はよろしくお願いします!
KH
よろしくお願いします!
灰根(吃音ラボ編集部)
まず初めにお名前とご職業を教えてください。
KH
KHと申します。ITの会社に勤めています。
灰根(吃音ラボ編集部)
具体的にはどのような業務内容なのでしょうか。
KH
ITで今やっていることは、新しいビジネスを作るということをやっています。具体的には新しいビジネスのためのシステム作りをやっています。
灰根(吃音ラボ編集部)
システム作りというのはSEのようなPCでプログラミングするようなイメージでしょうか?!
KH
そうですね!
灰根(吃音ラボ編集部)
職場で吃音についてカミングアウトしていますか?
KH
はい。しています。
灰根(吃音ラボ編集部)
それは就職活動中にすでに伝えていたのか、それとも就職してから伝えたのか、どちらでしょうか?
KH
私は面接のときにお伝えしています。職場に入る前からですね。言っています。
灰根(吃音ラボ編集部)
就職活動はすべての会社にカミングアウトした上で面接に臨んでいたんですか?
KH
そうですね。エントリーシートってあると思うんですけど、あそこに「私は吃音という発話障害を持っていて、面接や発表などでは上手に話せない」ということは書いていました。
灰根(吃音ラボ編集部)
エントリーシートに書いたことによって、相手の面接官の反応はいかがでしたか?
KH
吃音ではない人の面接をあまり見たことがないのでなんともいえないのですが、私のほとんどの面接では普通の対応をされたと思っています。一部だけ、集団面接などでは私だけ質問をされないとかそういうようなのはありました。
灰根(吃音ラボ編集部)
それぞれの企業の面接官は「吃音症」を事前に知っていましたか?
KH
正直ほとんど知られていなかったですね。一部の会社だけ「あ、そうなんだ」という対応をされました。
灰根(吃音ラボ編集部)
それでは「吃音症」についてほとんど知らない面接官が多くて、「吃音症とはどのような症状ですか?」と聞かれることもあったんですか?
KH
実はですね、そういう質問もほとんどなかったですね。「どういうような症状なんですか?」というような質問はほとんどなかったです。
灰根(吃音ラボ編集部)
じゃあ「吃音というのがあって喋るのが苦手なんです」、「あ、そうなんですか」で終わっちゃうんですか。
KH
そうです、そんな感じです。
灰根(吃音ラボ編集部)
就職活動中は吃音の症状は重たくなりましたか?
KH
そうですね〜私は結構重かったと思っています(笑)
今(このインタビュー中)もちょっと症状が重いなと思っているんですけど、面接があった当時は今の比じゃないですね。相当酷かったです。
灰根(吃音ラボ編集部)
僕も普段喋るときは大丈夫でも就活中は酷くなったので気持ちわかります。
カミングアウトをした上で仕事をやっているとのことですが、それでも吃音があることによって仕事で困ることはありますか?
KH
仕事で困ること……自分の中では困っていると思うことはいくつかありますね。例えば電話とか発表時にうまく話せないとかそういうのは結構あるんですけど。そちらは他の方が電話に出てくれるとか、発表のときは待ってくれるということをしていただいているので、(困ってはいても)問題にはなっていないです。
灰根(吃音ラボ編集部)
なるほど!それでは吃音をカミングアウトすることによって、ある程度配慮は頂けているんですね!
それでは、吃音の症状を自覚したのはいつですか?
KH
私は小学校2年生のときの本読みですね。「まる読み」という本読みのときに「。」が来たら他の人に交代するというやつなんですけど、あのときにどうしても言えない言葉があったんですね(笑)
今でも覚えているんですけど、「今」っていう単語です(笑)どうしてもこれが言えなくて、泣いてしまった覚えもあって(笑)
でも、泣いた後の記憶はないんです。「どうしても言えなかった」ということだけ覚えています。 
灰根(吃音ラボ編集部)
あーわかります!音読は地獄というか、一回つっかかってからは「もうなんで言えないんだろう」というのがありましたね〜。
よく聞く話だと、「あれ今どこ読めばいいんだっけ?」って誤魔化しかたをしたりとか、漢字がわからないふりをして誤魔化したりするとか。
KH
あーあるあるですね!(笑)
灰根(吃音ラボ編集部)
音読で吃音の症状を自覚したとのことですが、「吃音」という名前や、障害として扱われていることを正確に知ったのはいつですか?
KH
そういう障害だって認識したのは大学1年生のときですね。それまでは、なんとなく言葉が出しにくいというのはわかっていたんですけど、そのような病気とかではなく、練習不足とかそういうものかと思っていました。そういうもんだ(障害)だということをまず思わなかったので、調べなかったんですね。だから、大学に入ってからパソコンを使って調べたら「あっ障害なんだ」と思って知りました。
灰根(吃音ラボ編集部)
なるほど、後から調べてみて障害だということを知ったわけですね。
職場には吃音をカミングアウトしているとのことですが、友達など他の人にはカミングアウトしていますか?
KH
はい、しています。「しています」と言ったんですけど、正確には大学3年まではずっと隠していました。自分が話しにくい、というか、うまく話せないということはわかっていたんですけど、周りに知られるのが嫌だったんですね。それでずっと隠していたんですけど、もう隠せなくなってしまって、その後の新しくできた友達とかには自分は「吃音でうまく話せないです」ということはもう言っています。
灰根(吃音ラボ編集部)
大学3年以降に新しく知り合った人には自分カミングアウトしているとのことですが、それ以前に知り合った人にはカミングアウトしていないということですかね。
KH
実はそうでもないです(笑)前からの友人にも、一部の人には言っています。なんていうんでしょうね……別に……一部だけにする必要はないんですけど……。あんまり(吃音を)知られたくないという思いは今でもあります。おそらくそのせいで言ってないのかなと思います。言ったところで(関係は)なにも変わらないんですけど(笑)
灰根(吃音ラボ編集部)
昔からの知り合いで、自分から吃音についてカミングアウトしている人もいれば、中には特に自分から吃音について触れないままでいる人もいるということですね。なるほどなるほど。
その吃音について、言う人と言わない人との差というか、判断基準は何かあるんでしょうか?
KH
判断基準は…ないんですね(笑)ただ本当になんとなく、話したくなったときに側にいた人に言うみたいな感じになっています(笑)
灰根(吃音ラボ編集部)
あんまり意識して「こんな人には話そう」と考えているわけではなく、なんとなく話そうと思ったタイミングで話しているということなんですね。
それでは、話した人のその時の反応はいかがでしたか?
KH
反応はみなさん優しいなと思いました(笑)みんな本当に優しいなと思いました。あのつくづく自分から悩みを話してそれを受け入れてくれるというのはとてもありがたかったです!
灰根(吃音ラボ編集部)
じゃあ言ってみてよかったと?
KH
そうですね!言ってみてよかったです!
灰根(吃音ラボ編集部)
言った人は「吃音」という障害を知っていましたか?
KH
半々ですね。知っている人もいれば知らない人もいたという感じです。
灰根(吃音ラボ編集部)
今まで相手から「吃音ですか?」と指摘されたことはありますか?
KH
ないですね。大学3年生まではずっと隠していたので、吃音の症状が出る場合はそもそも話さないようにしていたので指摘はなかったですね。ただ最近はおおっぴらにどもっている姿を見せているので、他の人から指摘…まあこちらから言っているのであんまり指摘でもないんですけど、はあります。
灰根(吃音ラボ編集部)
小学校のときなんかに、喋り方について指摘されたことはありますか?
KH
はい、ありましたね。その小学校のときに言葉が出てこないとか言葉を繰り返すとか、真似されたことがあります。
灰根(吃音ラボ編集部)
やはり小学生だとそういうのがありますよね。
吃音については広めていくべきだと思いますか?
KH
私は広めていくべきだと思っています。その理由は、やはり配慮が必要な人がいるんですね。私自身も配慮が必要な人間だと思っているんですけど、そういう配慮を受けるためにはどうしても認知してもらうというのは必要だと思っています。!
灰根(吃音ラボ編集部)
僕も同じ思いです!やはり認知されていないと配慮を欲している人が十分な配慮を受けられないと思うんですよね。
KHさんは現状の吃音を取り巻く環境をふまえた上で、今後どうなっていけばいいとお考えですか?
KH
私は認知度の向上ですね。具体的に何をするかというと、小学校の先生方が「吃音」という症状を知っていて、そういう疑いがある子どもに対して適切なアドバイスをすることが必要だと思っています。
どうしてそこまでするかというと、現在でも吃音はそこまで知られていないせいで、学校の先生や、親御さんは知らなかったりするんですね。本人も知らないんですね、私がそうだったように。
本人としてはうまく話せないことに対して、「どうしてうまく話せないのだろう」とは思うんですけど、それが障害だとは思わないんですね。そのせいで「うまく話せない」という悩みを親や友人には打ち明けられずに、ずっと自分の中で抱え込んでしまうという状態に陥ってしまうんだと思っています。
そういうのはよくないな……よくないなというか、そこが本当に自分としては今まで生きてきた中で一番辛かったので。他の人に相談ができる環境づくりのためにも、認知度の向上というのは必要だと思っています。
灰根(吃音ラボ編集部)
素晴しいお考えですね!認知度はやはり低いですよね。吃音って100人に1人いるって言われているじゃないですか。それってものすごく多いと思うんですよね。それなのに認知度が低い。他にも色々大変な障害ってありますけど、これほど人口が多い障害ってあまりないんじゃないかなと思って。
KH
そうですね…たぶんADHDとかアスペルガーとかも1%より低いような気が……ごめんなさい調べてはいないのでなんとも言えないですが…。まあでも実際はやっぱりいるものはいるので……同じようにたぶん悩んでいると思うんですけど。
灰根(吃音ラボ編集部)
学校の先生の認知度を具体的にあげる方法としては、教員の採用試験とかで障害とかそういった内容の知識も求めるとかそういう方法ですかね?
KH
そうですね…具体的にやるとしたらそういうところですね。私学校の先生になったことないのでよくわかってないんですけど、たぶん方針みたいなものがあって、その方針に沿ったカリキュラムがあると思うんですよ。そのカリキュラムの中に、吃音…まあ吃音だけじゃなくて発達障害全般でもいいんですが、そういったものがあるというのをちゃんと入れて、採用するときにテストすることで発達障害を知っているかどうかを判別する環境づくりが、手っ取り早くできていい方法なのかなと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
では、学校の先生に必要な知識として発達障害について知ってもらってその上で採用してもらうのがいいということですかね。
KH
「知ってもらって」という感じで言ってしまったんですけど、学校の先生も忙しいと思うので、学校の先生だけではなく、医者ですね。医者というか言語聴覚士の先生が学校の先生を知っていて、「疑いがある子どもがいます」というのがわかった時点で、言語聴覚士の先生や医者に対してアドバイスを求めて、「〇〇のような対応をしてください」、というようなシステムがいいかなと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
なるほど。学校の先生と医者や言語聴覚士とで連携をはかって対応ができれば、吃音者の人にとっても助かるのかなということですね。
KH
結構学校の先生忙しいのかなと思うので…(笑)
灰根(吃音ラボ編集部)
まあそうですよねえ、あれもこれも(学校の先生に対応してくれと言うのは…)
KH
「あれもこれも」は本当に…大変だと思います……。
灰根(吃音ラボ編集部)
僕らは吃音者だから、「吃音」について知っていてもらいたいと思ってしまうけど、他の障害を抱えている人からしたら、その障害を知っていてもらいたいと思うはずですし。
KH
本当におっしゃるとおりだと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
KHさんはなぜ吃音ラボのインタビューを受けようと思ったんですか?
KH
受けようと思ったのは、受けてくださいと(灰根に)言われたからですね(笑)いや、本当それだけですね(笑)
いや、確かに認知度の向上とかもそうですし、今回の吃音ラボさんとかもそうなんですけど、こういう活動をされていてすごいなと思っていて、応援も兼ねて受けさせていただいています(笑)
灰根(吃音ラボ編集部)
そうですよね、僕がKHさんに懇願したので(笑)ありがとうございます(笑)
とはいえ、根本的に吃音の認知度が広まればいいなという思いはあったということなんですね。!
KH
そうですね!
灰根(吃音ラボ編集部)
ありがたいです!なかなか顔出しが条件でお願いしても受けてくださる方がいらっしゃらないので…。
KHさんは二つ返事でOKしていただけたので、大変助かりました。
最後に見ている方に何かメッセージがあればよろしくお願いいたします!
KH
メッセージという訳ではないですけど、やはりカミングアウトはした方がいいです。なぜかというと、(吃音を)言うことによって周りの方が配慮してくれるのもあるんですが、自分の中で「どもってもいい」という気持ちが持てるんですね。それが本当に楽というか、「どもることが悪だ」とあまり思わなくなります。なので、カミングアウトはした方がいいです。
別に、(吃音であることを)言ったとか言わないとかで周りの反応が変わるのであれば、その人はその程度のもんなんだと思った方がいいと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
本日はありがとうございました!
KH
こちらこそありがとうございました!
撮影後記
就職活動時から吃音をカミングアウトしていたKHさん。以前までは吃音を隠していたそうですが、吃音をカミングアウトするようになり、職場では配慮や理解が進み、交友関係では暖かく受け入れてもらえたと言います。そういった経緯からか、「吃音はカミングアウトしたほうがいい
と何度かおっしゃっていたのが印象的でした。
確かに私たち吃音者が「吃音」だとカミングアウトするのは勇気のいることですが、発信せずに相手に理解してもらうのはなかなか難しいと思います。
KHさんが最後におっしゃっていた「吃音を言う事で反応が変わるような人はその程度の人」という言葉は、確かにその通りかもなと納得させられる一言でした。「誰にも言えない悩み」としてひとりで吃音を抱え続けるのは辛いことです。KHさんのように吃音を打ち明けるという選択肢を、もっと多くの人が前向きに検討してみてもいいのではないかと思いました。

取材・撮影・編集=灰根