インタビュー

吃音当事者インタビュー じゃが

吃音当事者インタビュー

吃音を持ちながら日常生活を行っている当事者さんに職場での体験談や吃音をどのようにカバーしながら仕事をしているかや自身の吃音歴などのお話を伺っていこうと思います。
またお話頂いた内容で吃音改善に関わる内容が出てくる場合もありますが、あくまで個人の考えになりますのでご理解ください。

灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
本日はよろしくお願いします!
じゃが
じゃが
よろしくお願いします。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
まず初めにお名前とご職業を教えてください。
じゃが
じゃが
名前はじゃがと申します。職業はシステムエンジニアをやっています。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
システムエンジニアを始めてどれくらいになるんですか?
じゃが
じゃが
学校を卒業してからなので7年目になります。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
具体的にどのようなお仕事をされているんですか?
じゃが
じゃが
僕がやっているのは、お客さんがいて、お客さんから仕様・要求を聞いて、それを仕様書に落とし込みます。
「お客さんがしたいことはこうすればシステム化できるな」ということを考えて仕様書を書いて、それを実際にソフトにして、テストをして、お客さんに納品する、基本的に以上のような一連の作業を行っています。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
お客さんとコミュニケーションを取る機会は多いんですか?
じゃが
じゃが
そうですねえ。
お客さんとのコミュニケーションもありますし、どちらかというと僕の場合は社内で「お客さんからこういう要望があったんだけどこれをどうやって実現したらいいだろう」とか「作ったものに対してバグが出た場合どうすれば解決できるんだろう」みたいなかたちで、社内でそういう議論や会話をする機会というのはかなり多いです。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
なるほど。お客さんだけではなく社内でもコミュニケーションを取る機会は多いんですね。
そうしたコミュニケーションの中でご自身の吃音の症状が障害になっているようなことはありますか?
じゃが
じゃが
そうですねえ、それは入社した頃と今とでは結構変わってきていて。
今は職場でもそれなりにはどもっていると思うんですけど、そこまで弊害には感じていないです。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
入社したての頃は今と違って吃音を弊害に感じていたということですか?
じゃが
じゃが
そうですね。
入社前からの話をさせていただきたいんですけれども、入社前、僕の場合面接は割と得意な方だという自覚があって。
就職氷河期だったということもあって、かなりの数の会社の面接を受けているうちに、面接の技術だけはすごい上がっていって、面接の場だとまったくどもらないようになっていたんですね。まあなっていたというか、自分の中では「ほぼ完璧に喋れているだろう」という風に思っていて、それで入社面接のときも特に吃音だってことはわざわざ自分からは言わずに入社してしまったという経緯があって。
そのため、面接では特にそういう(吃音の)症状が出なくて特に問題はなさそうだったのに、入社後職場に入ってからめっちゃ日常生活や電話対応などでどもるから、そこがすごい辛くて。そのとき僕が考えたのが「それを言わずに入社してしまったのだから、詐欺みたいなものとして会社側から訴えられるんじゃないか」というような恐怖もあったりして、自分がどもるということに対してかなり敏感になっていました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
興味深い話がたくさんあったんですけど、面接の回数を重ねることによってかなり面接の技術が上がったということですが、単純に場数を踏んだ結果なのか、その回数を重ねていく上で何か喋り方について試行錯誤をしていたのか。
どのような経緯で上達したのですか?
じゃが
じゃが
おそらく今言われた面接の回数を重ねることと喋り方の工夫と、両方をやっていたと思います。
やっぱり初めは面接の場というのは当然緊張するし、すごいどもったりするんですけど、僕の場合だと最終的には確か30社分ぐらいの会社の面接を受けていて、やはりそれだけの面接を受けると、面接の会場とか面接の場面にかなり場慣れした感じになりまして。
それによって、面接の場で緊張するということがかなり少なくなってきたというのと、それだけ面接を重ねているので、自己紹介など吃音者が苦手な場面も、どういうタイミングで、どんな風に、どういうかたちで言えばどもりにくくなるかを徐々に徐々に覚えていきました。
あともう一点あるとすると、たぶんこれは僕自身の傾向というか特性みたいなものだと思うんですけど、自分自身何かの役に入り込んでしまうと吃音症状が出にくくなるということがありまして。
だからもうそのときは「就活生です」みたいな(笑)そういう役に入り込んでいたので、自分の自己紹介をするときも「模範的な就活生」みたいなかたちの演技を若干していたというところもあるのではないかなと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
面白いですね〜。
演技をしているときは吃音の症状が出ない、あるいは出にくいという話は他の人からも聞いたことがあります。
何かひとつヒントになりそうな話ですよね。そして、回数を重ねることによって面接の技術が上達したというお話も、面接やプレゼンやスピーチなど吃音者が一般的に苦手としている場面を克服する希望になりえる話でした。
緊張しているとどもりがひどくなるという人は多いですが、場慣れすることによって少なくとも普段程度のどもり具合には抑えることができるのかなと。
就職活動中は吃音については話さずに臨んでいたとのことでしたが、その後も吃音については話していないんですか?
じゃが
じゃが
前述した通り、吃音を隠して入社してしまった経緯があったので、やはり途中で吃音をカミングアウトするというのにどうしてもすごい足踏みをしてしまうような状態だったんです。
入社後1年ぐらいは自分から「自分は吃音なんです」というのは言わずに仕事をしていて。
1年目までは自社の中で先輩社員がいる中で作業していたんですけれども、2年目からは僕ひとりが客先に常駐してお客さんの中でお仕事をするという状況に変わり、電話対応もかなり増加してしまったんですね。
その期間が始まってから3ヶ月くらいですかね、電話対応が本当に嫌で、「電話が鳴るんじゃないか」という予感がするととりあえず席を立つとか(笑)
ちょっと説明しづらいんですけど、1つの島に4つの席があり、席にはそれぞれ人がいて、電話機はそこに1つしかない状況で、例えばここの人(同じ島内の人)に電話がかかってきてもこの電話機はここの4人の誰かが取らないといけなくて。
これで(電話を)取るのもちょっと辛かったので、人がいないときに電話機の向きをこっちの方の人の方(同じ島内の他の人の席)にするとか、そういう工夫をたまにやっていたんですけど(笑)ちょっとそれではどうにもならなくなってしまって、最終的にはカミングアウトいたしました。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
確かに後になってからカミングアウトするのは勇気がいりますよね。
自分としては吃音を隠して入社しているわけですから。電話が鳴るのが怖いという感覚は僕も経験があります。
就職してしばらく経ってから実際にカミングアウトをしてみて、周囲の反応はいかがでしたか?
じゃが
じゃが
カミングアウトするときも、ただ単にカミングアウトするだけじゃダメだなと個人的には思っていて。
一度カミングアウトする前に、言語聴覚士の先生のところに行きそこで診断を受けて訓練をし始めて。
そこは病院だったので保険適用がされるんですね。
保険適用がされているんだから(吃音は)れっきとした病気なんだ」というような、そういうお膳立てがないと、「吃音なんて気のせいでしょ」みたいなことを言われてしまいそうで。
そこがちょっと不安でそういうことまでやった上で僕はカミングアウトに臨んだんですけど、まず相手の反応としてはちょっと僕的にはびっくりしたんですけど、「ああ、知ってたよ」みたいな反応で(笑)
そもそもカミングアウトした人のひとりが会社の先輩だったんですけど、その会社の先輩は僕の入社面接の時も面接官としていた人で、その先輩いわく「面接でも結構どもってたよね」ということをおっしゃっていて(笑)
僕はかなり完璧に吃音を隠せたつもりで入社していたけど、実はそもそも会社側としては「この人は吃音があるな」「どもるな」とわかっていながらそれでも僕を採用してくれていた。
そういう経緯があって、すごい自分ひとりだけでずっと悩んでいて、本当はみんな僕がどもることを知った上で採っているんだなというのがちょっと衝撃的でしたね。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
会社の人はじゃがさんが吃音者であることをすでに認識していたんですね!
その上で採用してくれていたと。自分の中で悩んでいたけど、向こうからしたらすでに受け入れていたことだったんですね。
カミングアウトした後に、職場での環境に何か変化はありましたか?
じゃが
じゃが
その後の対応が変わったかどうかという話なんですけども、これはあまり変わりませんでした(笑)
あまり変わらなかったんですけども、逆に「あまり変わらない」ということが僕にとっては割とプラスだったような気がしていて。
そこで本当に電話など喋る機会を遠ざけられてしまうと、そこの場所ではいいとは思うんですけど、たぶんそのまま吃音があって喋れないまんまだったと思うんですよ。
けど、そこの職場では、特に吃音があるからといって喋る機会を減らしたりとか電話対応の機会を減らしたりとかではなくて、「とりあえずどもってもいいからやってよ」みたいな感じではあったので。
どもりはするんですけど、そういうかたちで特に変わらずに業務はできたので、そういう意味で今現在のように職場ではどもるんだけども、別にそれを業務として支障に感じていないと思えるのは、そういうところがあったからかなと思っています。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
吃音について配慮をすることが、もしかしたらその人の可能性を狭めてしまうかもしれない、という考えがもしかしたらあったのかもしれませんね。
じゃがさんはこれまでの経験を通して、吃音者であることは周囲の人に言うべきだと思いますか?
それとも言わないべきだと思いますか?
じゃが
じゃが
僕は本当に初対面の人に片っ端から吃音をカミングアウトすればいいというほどではないんですけれども、機会があって「ちょっと吃音で困るな」ということを感じているのであれば、言った方が僕としては状況的には楽になるというか。
向こうも吃音を知らなかったり僕が吃音症であることを知らないからこその対応もあるので、そういう意味では何か自分の中で「この人の対応ちょっと困るな」というのがあるのであれば、積極的にカミングアウトしていってもいいんじゃないかなと思います。
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
確かに。ちょっと困る対応をしてくる人がいたとして、それは相手が吃音について知らないからかもしれない。そうした対応も吃音をカミングアウトすることによって変わるかもしれませんね。
吃音ラボのインタビューに応じてくれたということは、じゃがさんなりに吃音に対する思いや考え方があって受けてくれたかなと思うんですけど、このインタビューを見てくれる人って、もしかしたら自分以外の吃音者に会ったことがない人もいると思うんですよ。そういった人達に何かアドバイスじゃないですけど、メッセージみたいなものがあればよろしくお願いします。
じゃが
じゃが
うーん…そうですね…アドバイスか…。
吃音の捉え方というのは人それぞれだと思っているので、僕がこうしたから、といってじゃあそれがいいことか、というのは僕的には言いづらいかなあと思っていて。
だからアドバイスというのは正直あまりないんですが、僕の経験として言うと、吃音をもっていることによって学生から新社会人ぐらいまでは「吃音なんてなかったらよかったのに」とすごい思っていたんですけど、社会人2年目くらいからちゃんと吃音と向き合い始めて、それでセルフヘルプグループに参加してもらったりとか、吃音の友達ができたりとか、こういうかたちでインタビューをしてもらう機会をもらえたりしたというのは、吃音のおかげ。まあ「吃音のおかげ」というのもおかしいんですけど、吃音があったからこそ人と人の繋がりや機会に巡り会えたので、そういう意味では吃音があっても悪いことばかりではない、というのは言いたいところではありますかね。
誰に対してなのかというのはちょっとよくわかんないですけど(笑)
例えば本当に吃音に悩んでいた頃の自分に対して何かメッセージを言うのであれば、「案外吃音があっても悪いことばっかじゃないよ」ということはちょっと伝えたいかなと思います!
灰根(吃音ラボ編集部)
灰根(吃音ラボ編集部)
悪い点ばかりに注目するのではなくて、考え方や視点を変えるだけで、見え方も変わってくる。素晴らしいメッセージでした!
本日は本当にありがとうございました!
撮影後記

吃音に悩み吃音を隠していた過去から、吃音を受容できるようになった現在までの経緯をお話ししてくれたじゃがさん。
多くの数の面接を受けながら試行錯誤してきたこと、吃音を職場にカミングアウトした後も今まで通りに仕事をこなしていること。吃音から逃げずに、向き合い、受け入れた。
そうした姿勢があるからこそ、現在のようなじゃがさんがいるのかなと思いました。
笑顔の優しいとても素敵な方でした。

取材・撮影・編集=灰根